男が入る隙のない小説だった。
豊胸手術をするためか,東京に遊びに来た巻子を取り巻くお話しが第一部となっており,続く第二部は精子提供でパートナーを持たずに出産しようか考えている夏子の話である。
どちらの章も男の体では体験しない事柄ゆえに,正直読んでいてどう咀嚼するのがよいのか考えさせられた。そもそも買う小説を間違えたかなと,前半部分を読んで思っていた。
本書を手に取ったきっかけは,海外で広く読まれているという情報を聞きつけたのと,ジュンク堂に平積みでババンと置かれているのが目にとまったからだ。
本のストーリーを知らずにかったゆえに,上記のストーリーの内容からどうも読んでいて戸惑った。後々振り返れば,本書へのコメント寄せている人がみな,女性だったということがヒントだったなと思った。
僕が考える小説の面白さというのは,登場人物の心情に共感できるかという点だ。
それゆえ,豊胸手術や出産をテーマの小説は,どうも没入できる感覚にはなれなかった。
だけど,世界中の女性から支持を得ている本書は,おそらく女性の悩みに寄り添っている作品なんだなと感じた。
それゆえ,わからないから面白くない,と判断するのはいささか野暮ったく感じた。本書を通じて,女性の深い世界をのぞく,という感覚でいた。また女性の気持ちを理解するという,たいそれたことは言えないが,こういうことを考えているのかと,知るのにはすごくいい本なのではないかと感じた。
特に作者が女性ゆえに,登場人物の心情のリアリティというのは高いのだろうと思った。